西八条殿の蓬壺
源平盛衰記巻二十六 蓬壺焼失の事
六日、八条殿も焼けぬ。この所をば八条殿の蓬壺とぞ申しける。蓬壺とはよもぎがつぼと書きけり。入道蓬を愛して、坪の内を一つしつらひて、蓬を植え、朝夕是を見給へども、なほ飽き足らずおぼしける。されば斜めならず造り瑩かれて、殊に執し思ひ給ひければ、常はこの蓬壺にぞおはしける。
(水原一考定『新定源平盛衰記』第3巻より引用)
先日のNHK大河ドラマ『義経』「清盛死す」で、清盛が蓬畑を眺めているシーンが出てきました。
実はこの蓬畑のシーンは、『源平盛衰記』に出てくるものです。清盛が蓬を愛して西八条第の一角に蓬を植えて眺めたという記事によります。
この記事は、『源平盛衰記』のみに出てくるエピソードで、他の諸本にはありません。
わたしはずっと不思議でした。清盛が蓬を愛でて育てる図。
松とか桜とか梅とかなら納得できます。蓬ですよ!
蓬が生い茂った様を表現する「蓬生」は、荒れ果てた様子を表す言葉として使われます。
私は次のように考えます。
「八条殿の蓬壺」=「八条殿の御所」のことではないでしょうか。
『拾芥抄』に、内裏の唐名として「蓬壺」があげられています。
西八条第は短期間ではありますが、里内裏、院御所となっています。
西八条第内の里内裏、院御所となった邸宅を、「西八条殿の蓬壺」というのはないでしょうか。
| 固定リンク


コメント
初めまして!
平家物語の検索をしていてこちらのブログを見つけました。
内容が充実しており、とても興味しろいですね。
これからも時々遊びに来させてもらいます。更新、楽しみにしています!
投稿: hapipi_hapipi | 2005.05.10 23:17
hapipi_hapipiさん コメントありがとうございます。
そう言っていただけると、たいへん励みになります。
これからもよろしくお願いいたしますm(__)m
投稿: ぼんやり | 2005.05.11 22:09
ぼんやり夫人さん こんばんは!
私もドラマで清盛が蓬を愛でるのが不思議でしたが、なるほど!内裏の唐名を「蓬壺」というのですね。
納得です!!(^。^)
投稿: なぎ | 2005.05.13 22:35
なぎさん コメントありがとう♪
大河の清盛の蓬畑シーンを見て以来、ワンの散歩で草むらのヨモギを見るたび笑ってしまいます。
ヨモギ畑だと香りはいいかも。
投稿: ぼんやり | 2005.05.16 14:00