8月8日(月)〜10日(水)
沖縄行きである。
花園大学文学部の八木晃介教授率いる花園大学人権教育研究センターでは、毎年夏に「現地考察」をやっている。ここ数年は沖縄行きが続いてるが、今回も対象地は沖縄になった。私も、なぜか同センターの副所長というのをつとめているので、当然のごとく参加する。
8日、伊丹空港を飛び立つ。だいたい、飛行機は嫌いだ。あんなものが空に浮かぶことすら、私の理解を絶している。しかし、海の外に行くのにはやはり飛行機を使わねばならないから仕方ない。大阪湾の上空からは、埋め立て中の神戸空港予定地が見える。伊丹の近所になんでこんな空港が必要なのか、どうしても私の理解を絶している。
那覇空港に着くと、まずは恒例のソーキそばで昼食。店員の愛想は悪いが、味はおいしい。続いて、沖縄中部の金武町<きんちょう>に向かう。ここには米軍の基地・キャンプ・ハンセンが所在している。広大な基地である。ここではさまざまな戦闘訓練がおこなわれているそうで、これまでもさまざまな事故がおこってきた。それに加えて、最近では米軍の「都市型訓練施設」が建設されつつあり、反対運動がおきている。確かに、これはいくらなんでもムチャクチャである。建設地は集落から300mしか離れていないし、すぐそばを沖縄自動車道(高速道路)も通っている。そこで射程距離1キロ以上にもおよぶ銃を使って訓練をするというのである。これまでも流れ弾が飛んできて住民がケガするという事故がおこってきたが、こんなところに新たな訓練施設ができたら、住民はおちおち寝てもいられまい。なんでもっと山奥に造ろうという配慮がないのか、どう考えても私の理解を絶している。住民が建てた監視台のヤグラ(写真)(まるで発掘現場の写真撮影用のヤグラのようだ)に登り、すぐそばの訓練施設をながめながら、その間に通っている深い深い「断絶」に思いをめぐらす。
本日の泊まりは沖縄中部北岸の恩納村<おんなそん>の、おそらく修学旅行生用のホテル。なんか、市営住宅のような不思議な造りである。しかし、部屋は広い。ただ、その分、クーラーがなかなか効かない。夜は外でのバーベキュー。お腹は一杯になるが、やはり暑い。汗だくになりながら肉を掻き込む。
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9日は、北部の名護市辺野古<へのこ>に向かう。ちょっと時間があるので、ナゴパイナップルパーク園へ立ち寄る。期待していなかったが、これがなかなか面白い。しばらく遊ぶ。パイナップルワインの飲み放題とパイナップルの食べ放題があるが、そんなにたくさん胃袋には入らない。
辺野古は、宜野湾市にある普天間基地の代替地として、海上基地の建設予定地としてあげられたところである。地元で反対運動をやっておられるUさんに講演をしてもらい、それから現地にでかける。去年来た時には嵐の中だったのでそんなに感じなかったが、やはり綺麗な海である(写真)。この海を守りたい、という気持ちには共感する。しかし、現地は殺伐としている。これまで自由に入れたはずの漁港にはフェンスが新設されているし、新たに配置された警備員が不審そうにこちらを眺めている。その側に、反対派の「座り込み小屋」(写真)が造られている。物々しい雰囲気である。
現地に行ってみると、やはり色々なものが見えてくる。ひとつは地元の亀裂の大きさ。地元の漁協は賛成に回っているから、反対派は舟を出すために漁港を使うことすらできない。すぐそばには、基地誘致促進派の住民の施設も造られている。人口数百人の村落でこんなことになっているのである。私たちは、つい「地元住民の方々は・・・」と言ってしまいがちになるが、その地元住民が割れているのである。「地元の意見を聞いて・・・」などという言葉を軽々しく使うことは、ここではできない。それに、建設側と反対派の抗争の中で、物理的な「力」が重要な役割を果たしているのにも、暗澹たる気持ちになる。力と力がぶつかり合い、それがやがて力の悪循環になっていくとすると、これほどヤバイことはあるまい。
もうひとつ、辺野古の運動については深刻な問題に気づく。反対運動をしている方々の中には、とにかく辺野古の美しい海を守りたい(つまり、辺野古以外であれば基地を造っても良い)という人と、沖縄から(さらには日本から)米軍は出て行けという人が共存しているというのである。これは、一見すると同一目標のように見えるが、はっきりと言うと呉越同舟であろう。運動にとって、この差異が望ましくない結果をもたらさねば良いのであるが・・・ いささか落ちこんで、現地を離れる。
夕食は名護近くの海岸の名護曲<なぐまがい>レストラン。私は知らなかったが、琉球海産物料理の店としては結構有名らしい。どこにでもある国道沿いの飯屋のように見えるが、中身は凄い。アヒル、イルカ、ウミヘビ、ウツボ、ヤギなどをはじめ、他では見たことのないような不思議なメニューが並ぶ。みんなが一緒なのでそんなに変わったものは頼めなかったが、沖縄の庶民料理の粋を堪能する。
宿に帰ってからは、一室にこもって飲み会。泡盛のロックを傾けると、やっぱり飲みすぎになる。
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10日(水)は、沖縄国際大学に行く。昨年、米軍のヘリコプターが落ちて校舎が黒焦げになり、あわや大惨事、という大事件がおきたところである。昨年は、われわれは事件の起きた直後にここを訪れた。黒焦げの校舎を米軍が占領し、緊迫感にあふれた雰囲気であったことを思い出す。今は、被害にあった校舎は撤去されてあとかたもなく、真っ黒の壁の一部がブルーシートに覆われて横たわっている。ここでは、旧知の社会学・平和学の石原昌家教授の講演を聴く。石原教授によると、この「壁」の保存をめぐって、大学内はまっぷたつに割れていたらしい。ここでも、暗い気持ちになる。
石原教授の熱のこもった話を聞いたあと、昼食は石原先生お勧めの沖縄そば屋さん与那原屋に遠征する。沖縄そばは私の大好物であるので、とってもとってもありがたい。やはり、沖縄ではそばに限るね。
16時20分、那覇空港発。18時10分、伊丹空港着。おくたびれでした。寝ます。