ダライ・ラマ14世法王を拝む、の巻
周期的に回ってくる、スランプ。おかげでブログもしばらくお休みしてしまった。御気遣いいただいた皆様、申し訳ありませんでした。
ダライ・ラマ14世法王が講演のために来日された。少し前に胆石の手術をなさったそうで案じていたが、それも大過なかったようでなによりである。今回は、北九州市と東京で講演をされるとのこと。関西でもやっていただけたら良いのだが、贅沢はいえない。この機会を逃すと後悔するだろうから、仕事の段取りをつけて、北九州での講演に参加することにした。会場は巨大な北九州メディアドーム。主催者発表では、6000人を超える数の人々が参加したという。
待つこと1時間半、主催者の福岡県仏教連合会の方々が登場し、最初の「世界平和祈念法要」の開始である。福岡のお坊さんたちが居住まいをただす中、突然、おなじみのエンジ色の袈裟に身を包んだ法王が登壇される。全員が日本風の般若心経を読んだ後に、法王がチベット語で般若心経を朗読されたのが印象的だった。面白かったのは、法王、儀式の継ぎ目のタイミングがよくわからなかったようで、周囲を見回して様子を測っておられたと見るや、カッカッカッという忍び笑いを漏らされていたこと。
法王の御講演は「幸せへ導く 慈しみのこころ」。法王の独擅場ともいえる、人間にとっての「慈悲の心」の大事さを身振り手振り入りで詳細に説き聞かせる(ただ、残念だったのは、日本語翻訳がいさささか分かりにくく、せっかくの御講演の全体像がよくつかめなかった)。
法王は、講演そのものよりもその後の質疑応答を楽しみにしておられたようで、司会者が時刻を気にして終了に持っていこうとしても、「ワン・モア・クエッション」と会場を催促される。結局、実に予定を1時間もオーバーする仕儀とあいなった。
それにしても、この御方はなんと誠実で正直なことだろう。観音菩薩の化身として崇められている身なのであるから、もうちょっと偉そうにしても不思議ではない。それなのに、この人は平然と「自分は一介の僧侶にすぎません。他の人とまったく変わったところはないのです」とおっしゃるし、自分の中に抱えている矛盾も赤裸々にさらけ出し、隠そうとはされない。時には自分のジョークに自分で大受けして、腹の底から高笑いされる(同じような世界的宗教指導者でも、現任のローマ教皇ベネディクト16世が公の場で自分のジョークに大笑いする様子など、私には想像もつかない)。こうした法王の気質を批判する向きもあるようだが、少なくとも私にはこの上なく自然な態度に思える。
ひとときではあったが、現代世界の最高の人物と、同じ場で同じ空気を共有することができた。これを幸せといわずしてなんと言おう。
講演が終わった後は福岡に足を伸ばし、KK博物館のIR氏を呼び出して、中州で痛飲。