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2010.05.02

「刑事コロンボ」の名犯人役・ロバート・カルプ氏の死を悼む、の巻

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 ちょうど海外旅行中なので気がつかなかったのだが、3月24日にアメリカの俳優・ロバート・カルプ氏が急死されていたという。79歳だったとのこと。

 カルプ氏、古くはテレビシリーズ「アイ・スパイ」や、単発のテレビドラマ「殺人者にラヴ・ソングを」などで人気を博したというが、私は見ていない。私にとってこの俳優さんのイメージが焼き付いたのは、懐かしのテレビ・ミステリ・シリーズ「刑事コロンボ」である。私が「刑事コロンボ」シリーズを最初に見たのは確か中学生の頃。ミステリは大好きだったのだが、日本のしょーもないミステリ・ドラマには飽き飽きしていた。だからこそ、「刑事コロンボ」に出会った時は衝撃だった。それまで知らなかった「倒叙方式(まず犯人の犯行を描いてから、後で探偵が登場して捜査にあたる)」というのがまず圧巻だったし、ミステリとしての質の高さにも驚嘆した。そして、最期の土壇場でのコロンボの「逆トリック」がいずれも鮮やかすぎるほど鮮やかで、子供時代の私はワクワクしながら放送を待ったのである。ちょうど今現在、NHK衛星放送およびハイビジョン放送でコロンボの再放送をやっており、その鮮明な映像でかつての感激を新たにしていたところであった。

 カルプ氏が「刑事コロンボ」に出演したのは、1971年〜78年の旧シリーズで3回、1989年〜2003年の新シリーズで1回。特に旧シリーズでは3度の犯人役であった。そもそも刑事コロンボシリーズは多彩なゲスト・スターに犯人を演じさせることを特色としており、ほとんどのゲストは一回こっきりの出演であった。それが、旧シリーズで3回の登板というのはロバート・カルプとジャック・キャシディだけの記録なのである(新シリーズを含めると、パトリック・マクグーハンの4回の犯人役が最多)。それだけ、カルプとキャシディは刑事コロンボシリーズの典型的な犯人を見事に演じていた。特にカルプは、都会的、スタイリッシュ、スマート、インテリ、自信家、など、刑事コロンボシリーズの理想的犯人像を創り上げたといってよい。

 私にとって、「刑事コロンボ」シリーズの最高傑作はロバート・カルプが犯人を演じた「意識の下の映像」。この作品、巷では必ずしも高評価というわけにはいかないようだし、なによりも、犯人のトリックに使われた「サブリミナル効果」が、その後の研究では効果に疑問符が付けられているところが痛いし、よく見るとミステリとしての穴も散見する。しかし、ここではそんなことは関係ない。「刑事コロンボ」の神髄は「意識の下の映像」にあり。これだけは、他の誰がなんと言おうとも譲りません(笑)。
 そこまで私が入れ込むのは、なんといってもカルプが演ずる犯人・行動心理学者のバート・ケプル博士(この名前、ロバート・カルプのもじりなんだろうな)のカッコいい「名犯人」ぶり。ここでの魅力は、犯人がコロンボの力量を十二分に認め、好敵手として遇しながらも、あくまで余裕綽々でコロンボの追究に対応していること。ここから生み出される正面切った対決はまさに名勝負の連続で、今見直してもハラハラドキドキするばかりです。

100501 中学生の私、この作品に影響されて、大学に進学したら考古学でなければ心理学をやろうかと真剣に考えたものな(^^;)。まあ、それは一種の「思考実験」に終わったが、それでも、中学や高校時代に岩波新書なんかの心理学の入門書を読みふけったことはある。ついでに言うと、岩波新書で出ている河合隼雄『コンプレックス』(名著!)を読んで感激したのもこの時のこと。さらについでにいうならば、私の造語で、私の都市史研究の基礎概念のひとつとなっているのが「巨大都市複合体(きょだいとしコンプレックス)」というのがある。中世などにおいて、卓越した巨大都市を中核として、その周辺に衛星都市群が散らばり、その全体がひとつの都市圏を形成している(中世京都など)というものである。この用語を考えている時に、どうしても「複合体<コンプレックス>」というコトバを使いたかったのも、さかのぼればこういうところに遠因がある。

閑話休題。

 現実のカルプ氏はガン・マニアとしても知られていたようで、刑事コロンボ「意識の下の映像」における殺害シーンはまさに圧巻で、ピストルを手にした姿がいかにも絵になっていた。さらに付記すると、刑事コロンボシリーズでロバート・カルプの日本語吹き替えを担当しておられたのが、最近の三谷幸喜作品での脇役でも知られるベテラン・梅野泰靖氏(最近まで、「うめの・やすきよ」と読むのを知らなかった(^^;))。コロンボ研究家の町田暁雄氏は著書『刑事コロンボ読本』で「ロバート・カルプ=梅野泰靖という吹き替えは、シリーズでも屈指の名キャスティングであろう。前2作もよいのだが、やはり本作のケプル博士がベスト」といっておられるが、まさに同感。

 「刑事コロンボ」での名演を通じて、私にとっての「思い出のスター」のひとりとなっていたロバート・カルプ氏。ご冥福をお祈りいたします。

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