ダライ・ラマ14世法王長野講演に参加する、の巻
6月20日(日)
日帰りで、長野行き。
ダライ・ラマ14世法王が、今年も来日された。これで3年続けての来日だということになり、まことにありがたい話である。法王も74歳という御高齢になっておられるのであるが、相も変わらぬ精力的な御活動には頭が下がる。今回の来日は、長野の善光寺の招聘に応じてである。善光寺といえば、2008年の北京オリンピックの際、長野での聖火リレーの出発地に選ばれながら、中国政府と中国共産党のチベット弾圧を憂い、聖火リレーを辞退するという英断を下したお寺である。私はオリンピックに関心がなかったが、あの時のニュースを見ると、全国から中国人や中国シンパの人々が長野に集まり、長野は中国の赤い国旗によって埋めつくされていた。その中でチベット国旗を持っていようものなら警察に誰何されて聖火リレーの沿道には近づけず、さながら長野は中国の領土と化したような感すらあったという。しかし、脳天気な人々がオリンピックと聖火リレーに浮かれている中で、善光寺だけはその裏側に潜む不正義を正しく認識し、チベットの人々の安寧を祈り続けていた。やはり宗教者たる者はこうでなくてはなるまい。まことに見上げた心意気である。このことを聞かれた法王も、チベット人を代表して善光寺に謝意を表し、それが機縁となって法王と善光寺の交流が生まれた。そして、そうした活動が今回の法王の招聘となって実を結んだのである。
長野に足を運ぶのは久しぶりであるが、京都からはやっぱり遠い。それに、名古屋からの特急の列車内が蒸し暑くて閉口である。長野駅に到着したのは昼前。講演会場は長野市郊外にあるビックハットという巨大なドーム。長野オリンピックの会場としてたてられたものらしい。長野駅東口からは臨時のシャトルバスがでているので、さっそくそれに乗り込む。
会場はさすがにたくさんの人である。聞いてみると、7千人ほどの人々が参集されたという。決してチベット問題に関心が深いといえない我が国でこの数なのだから、やはり大したものだといわねばなるまい。会場のセキュリティと警備が厳しすぎるのはいささか閉口だが、法王猊下の安全を守るためだというならば、これもいたしかたないだろうな。
般若心経のあと、法王の御登壇。私は、ギリギリまで行けるかどうかわからなかったのでチケットをとるのが遅くなってしまい、後ろの方の席になったのが残念。双眼鏡を持ってくればよかった・・・
御講演のテーマは「善き光に導かれて—今、伝えたい心—」。最初に般若心経を唱えたこともあって、般若心経の解説から始まる。般若心経とは観音菩薩のお経であり、ダライ・ラマ法王はチベットでは観音菩薩の化身と信じられているから、いわばこれはもっとも正統的な般若心経講義だということになる。ただ、内容の理解がちゃんと及ばなかったのは、当方の無知無学。せっかくの機会なのに、恥ずかしいことである(>_<)。
今回の御講演の中で感銘深かったのは、「優れた知性とは、落ち着いた精神と平和な心があってこそ正常に機能する。それでこそ、現実を知る客観的な目を養うことができる。怒りの心や欲望に満ちた精神では現実を正しく見ることはできない」といわれたところ。これ、研究の分野にもぴったりと当てはまることだな。
ともあれ、3年連続でダライ・ラマ法王と同じ場の空気を吸うことができた。ありがたいことである。
せっかく長野に来たのだから、善光寺にお参り。ひさしぶりである。美しい石畳の参道をたどりながら、長野という都市が、善光寺の門前町であることを改めて認識する。帰り道で、刈萱道心と石童丸の伝説が残る刈萱山西光寺にもたちよる。絵解きの寺としても有名なようで、今度はぜひ絵解きを聞かせてもらうことにしよう。