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2010.12.10

劉暁波氏のノーベル平和賞受賞を祝す、の巻

Photo 12月10日
 遠くノルウェーの首都オスロで、ノーベル平和賞授賞式がおこなわれたという。今年度の受賞者は中華人民共和国の作家にして民主運動家、劉暁波氏(写真)。氏に心からの祝意と敬意を捧げるともに、中華人民共和国の国民の中から始めてのノーベル賞受賞者が出たことを、中華人民共和国の全国民の皆さん、中華人民共和国政府の皆さん、中華人民共和国共産党の皆さんにお祝いを申し上げ、この喜びを共にしたいと思う。
 劉暁波氏の受賞の主要な要因となったのは、氏が起草し、心ある多数の中国知識人の賛同を得て発表された「08憲章=中華連邦共和国憲法要綱」である。これについては以前にもちょっとだけ触れたように、まったく正当な主張である。
 さらに強調しておくと、この憲章の内容は、中華人民共和国の憲法にまったく合致している。同憲法には次のような素晴らしい規定があり、この精神は08憲章と目標を一にしているからである。
 第4条 中華人民共和国の諸民族は、一律に平等である。国家は、すべての少数民族の適法な権利及び利益を保障し、民族間の平等、団結及び相互援助の関係を維持し、発展させる。いずれの民族に対する差別及び抑圧も、これを禁止し、並びに民族の団結を破壊し、又は民族の分裂を引き起こす行為を禁止する。
 第35条 中華人民共和国公民は、言論、出版、集会、結社、行進及び示威の自由を有する。
 第41条1 中華人民共和国公民は、いかなる国家機関又は国家公務員に対しても、批判及び提案を行う権利を有し、いかなる国家機関又は国家公務員の違法行為及び職務怠慢に対しても、関係のの国家機関に不服申し立て、告訴又は告発をする権利を有する。
 等々・・・

 しかし、中国政府と中国共産党のやりかたを見ていると、中国政府要人や中国共産党指導部は中華人民共和国憲法を読んでいないらしいということがよくわかる。もちろんそうした人々は国家の指導と国民の幸福のために全精力を注ぎ込んで多忙を極めているのであり、憲法など丁寧に読んでいる暇など持ち合わせていないことはよくわかる。ただ、せっかく自国にある素晴らしい憲法なのだから、豪勢な中華料理に舌鼓を打っている時間のほんの一部を割いて、たまには憲法に目を通してほしいものである。

 中国では、ノーベル平和賞に呼応して、孔子平和賞」なる賞が制定され、その栄誉ある初代受賞者には台湾にある中華民国の連戦・元副総統が選ばれたという。ただし、連戦氏がこの受賞を承諾したかどうかは不明。

 この経緯を聞いて、60数年前の同じような出来事を思い出した。ヒトラーが支配していたナチ・ドイツの時代、カール・フォン・オシエツキーというジャーナリストで平和活動家がいた。ナチは彼を危険視し、1933年に政権を奪取するや彼を逮捕、刑務所から強制収容所に送った。しかし、世界は彼を忘れてはいなかった。1935年のノーベル平和賞はオシエツキーに贈られたのである。ただ、強制収容所に入れられていた彼はもちろん授賞式には出席できなかった。ナチ・ドイツ政府はオシエツキーへの平和賞授与に激烈に反発し、ついにはドイツ国民がノーベル賞受賞を禁止する決定をくだした。そして、それに替わるものとしてヒトラー自らの決定によって、1937年にドイツ芸術科学国家賞が創設されたのである(同年の受賞者3人の中のひとりは、ナチ党対外政策全国指導者のアルフレート・ローゼンベルク。これは、ナチ古参党員でありながら権力から疎外されていたローゼンベルクを慰めるためだったというから、この賞のお手盛り度が知れる)。

 これ、今回の経緯とまったく類似している。賢明な中国指導部がまさかヒトラー・ドイツの真似をするはずがないとは思うが、世界からは中国共産党とドイツ・ナチ党が類似しているという誤解を産む要因となり、また新たな中国バッシングの種にされるかもしれないから、中国政府はナチ・ドイツとは違うというところを行動で示して欲しいね。つまり、劉暁波氏を釈放し、自由な発言を認めるという度量を示すこと。

 中央チベット行政府(チベット亡命政権)の内閣(カシャック)は、サムドン・リンポチェ5世ロブサン・テンジン首相の名で劉暁波氏の受賞を祝する声明を公表している。そこでは「2010年のノーベル平和賞を受賞されました劉暁波氏に心からのお祝いを申し上げます。この最高の栄誉を同じ国民が受けたことを中国中の皆さまが誇りに思わなければいけません」と述べられている。まったく、同感。

 劉暁波氏が早急に釈放されて自由の身になることを希望するとともに、中華人民共和国が民主化され、真に世界の尊敬を集める国家に生まれ変わることができますよう、祈りを捧げたい。

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