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2013.08.18

森浩一先生の著作から

130818

 森先生の著作の中からいくつかを、本棚からとりだしてみた。

 ◎カラーブックス『古墳—土と石の造形—』
 私が中学校1年生の時、飛鳥の高松塚古墳の発掘調査で見事な壁画が見つかり、それが大きなニュースとなった。それまでも歴史は好きだったのだが、私ははじめてここで「考古学」という学問があることを知り、大きな憧れを感じたのである。本屋さんに飛んで行って、はじめて買った考古学の書物が森浩一先生のこの著書『カラーブックス 古墳—土と石の造形—』であった。この本はそれこそ、何度読み返したかわからない。小さな書物ではあるが、私はいまだにこれは名著だと思っている。奥付のところに、まだ40歳代だった若い森先生の顔写真が掲載されているのも懐かしい。後、保育社から私に『カラーブックス 京都』の執筆の依頼がきた時、森先生の『古墳』と同じシリーズに私の著書を加えてもらえるのだ、ということで、誇りと喜びに満ちた感を味わった。

◎中公新書『古墳の発掘』
 発掘調査報告書を除くと、森先生の単著としては最初のもののはず。『カラーブックス 古墳』の次に購入。同時に購入して読んだ小林行雄先生の『古墳の話』(岩波新書)よりも、森先生の『古墳の発掘』に、息が詰まるほどの感動を覚えた(なお、私がこの小林先生の著書の真価に気づくのは、もっともっと後のことだった)。天皇陵問題、古墳の保存運動など、これも若き森先生の躍動感がビンビンと伝わってくる名著である。私が最初に読んだのは第11版の「増補版」(写真左)。写真右はそれ以前の版。応神天皇陵が○(信頼できる)から●(矛盾はないが決めてもない)に変わっているとか、梅山古墳(治定欽明天皇陵)の評価が変更されているところがあるとか、中身を比べてみるのも興味深い。

◎『新・日本史への旅』、『交錯の日本史』
 独断と偏見でいいから森先生の著作のなかからひとつ選べ、と言われたならば、私としてはこれを第1番に挙げる。森先生の独自の地域文化への視線が、これほどまでに花開いた成果はほかにない。『交錯の日本史』が出た時に書いた書評で「銅鏡を写した姫路の磁器、鯨の骨でつくった大阪の橋、縄文の石皿に鹿の生首をのせたありさまを描く秩父の絵馬、「日本将軍」を名のる青森の豪族……等々。ページをめくりながらわたしは、いつしか交錯の国の迷路に迷いこみ、どきどきしながらそこを探検している自分に気づく」と述べたが、このワクワク感、ドキドキ感は他に替え難い。『新・日本史への旅』も良いのだが、『交錯の日本史』はそれを上回る超名著。

◎『京都の歴史を足元から探る』
 意外かもしれないが、森先生の単著としての最大の「大著」は、古墳に関するものでも邪馬台国に関するものでもなく、この「京都の歴史」である。A5版で全6巻、先生の執筆は1600頁余におよぶというのだからものすごいし、それを僅かな期間で一気に書き上げられたというのにも圧倒される。しかもそれは、宿痾を得られて、それまでのような思うままの旅がままならなくなったという事情から、「足元の京都を見直してみよう」と決意されての仕事だという。先生の、あくまで前向きな思考には敬服せざるをえない。
 「京都の歴史」は私にとっても専門分野のはずなのである。しかし、この巨大な山脈の前にあっては、なすすべもなく立ちすくんでいる自分がいる。

 私たちは、森先生の残されたものをどう受け継いでいくことができるのだろうか・・・・

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