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2013.10.04

宇宙戦艦ヤマト2199〜宣伝情報相ミーゼラ・セレステラ、の巻(2)

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↑ 第25話「終わりなき戦い」(9月22日)でのセレステラ。上のカットで一瞬みせたコワい表情だけは従来のセレステラらしくて、これだけは気に入っている。しかし、この2カット以外は見るに耐えない。

 9月29日で、全26回にわたった「宇宙戦艦ヤマト2199」が放映終了した。

 はっきり言います。私、怒ってます。総監督の出渕裕氏の罪は万死に値すると思ってます。8月8日のブログで書いたように、前半はまだ良かった。今から思うと、前半部にもいろいろな欠点が見え隠れしてきた。それにひっかかりを感じないわけではなかったが、最新技術の絵の綺麗さとか、人物表現の彫り込みの深さとかの長所に目を眩まされていた。その点では、ファンの中には早くから危惧を表明されていた方もおられたのだが、それが正しかったといわざるをえない。残念である。本当に残念である。

 私は旧作時代からのヤマトファンであるが、だからといって旧作と違っているから新作はダメだなどと短絡するわけではない。どうしても新作は旧作と比べられてしまうから損なところはある。しかし、新作は技術の進歩など、旧作の段階ではなかった利点を享受することができるのであるから、あとはストーリーのもっていきかたで素晴らしくする方法はいくらでもあるはずである。

 それでは、新作の出渕総監督の最大の罪は何か。ヤマトの最大の敵役<かたきやく>であるデスラー総統の描き方である。他のファンの方も指摘されているから最小限のところだけを述べておくが、旧作でのデスラー総統は、確かに非情で傲慢な独裁者ではあったが、冷酷さの奥には実は熱い熱情を秘め、そして何よりも、滅びゆく宿命を背負わされた母なる星に対する愛と、国民の指導者としての責任感を兼ね備えた大人物であった。旧作のデスラーの「狂気」は、むしろ彼の貴族的な気品と心の底の情熱と、うまく相互補完していたのである。

 それが、今回の「2199」のアベルト・デスラーはどうか。端然と落ち着いていた前半部ではその欠点は隠蔽されていたのであるが、後半部では「狂気」だけがどんどんと暴走。その行動は支離滅裂、発言はムチャクチャ、行動原理はただただ片思いの女に対するストーカー的執着だけだという、ひとりよがりの完全な人格破綻者に成り下がったのである。これでは、視聴者は唖然とするほかはない。それまでは総統の腰巾着にしかすぎなかった副総統レドフ・ヒスが最後になって「これが指導者のやることか! デスラー!」と怒りと絶望の叫び声をあげたのは、私たちの気持ちをも代弁したものといえよう。

 しかも、その破滅の仕方もあまりに情けない。最終兵器であるデスラー砲(ヤマトの波動砲に相当)が2回とも暴発してしまい、敵であるヤマトにあたるどころかそれで自分の身を滅ぼしてしまうというのであるから、情けなさが極まってもはや笑うしかない。

 もうひとつ。私が「ヤマト2199」の最大の収穫であると思い続けてきたのが、ガミラスの宣伝情報相ミーゼラ・セレステラ。「この人物を創造することができただけでも、今回のヤマトのリメイクのかいがあった」という私見は、今でも変わっていない。
 ところが! 後半部でのセレステラの扱いを見て、怒りがフツフツと沸いてきた。それまでのセレステラは頭脳明晰にして冷静沈着な、まことに魅力的でカッコいいキャラであった。しかし最終盤ではそれを一転させ、セレステラを少女漫画によくでてくるような、お目々の中にお星様キラキラ状態の脳内お花畑女に変身させてしまったのである。彼女の死に様も、これはまったくの無駄死にである。出渕総監督、何ということをしでかすのだ! 
 以前からファンの間では密かに、セレステラは最後は死ぬだろうということは予想されてきた。私も内心では生き残ってくれるように希望していたが、彼女は最終的に死んでしまうという感じはしていた。しかし、同じ死ぬにしても、敬愛するデスラーの楯となるとか、ヤマトに最終決戦を挑んで相討ちになるとかいう、華々しくもカッコいい死に方が用意されているだろうと信じていた。しかし、それは見事に外れたのである。自分の期待が外れたから文句を言っているのではない。準主役は人格破綻者。貴重な宝玉のようなキャラは実は単なる捨て駒。ついでにいうと、主役格の古代進も最終盤は恋人の森雪のことだけで頭がいっぱいで、「ユキ〜! ユキ〜!」と叫ぶだけの馬鹿男に堕していた。これではいくら絵が綺麗でも、作品全体に共感することができようはずがない。

 「宇宙戦艦ヤマト2199」、残念な気持ちで一杯である

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