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2017.12.10

『角田文衞の古代学』4「角田文衞自叙伝」刊行、の巻

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 完成しました! 『角田文衞の古代学』4「角田文衞自叙伝」

 平成20年(2008)に95歳で亡くなられた角田文衞先生は、その永い生涯の中でおびただしい研究業績を残し、「古代学」という学問体系を確立されました。それは方法論的には考古学と文献史学を両輪とし、日本や西ヨーロッパといった狭い範囲のみを対象とするのではなく、世界史的な視野に立脚するものでした。こうした角田先生の膨大な業績は、60冊近い先生の著書にまとめられているし、また日本の古代史関係の諸論文は昭和59年から61年にかけて刊行された『角田文衞著作集』(京都、法蔵館)全7巻に収められています。しかし、こうした多数の書物ですら、先生の業績の全てを収録するにはまだまだ不足です。そのため、先生の「第2著作集」とも言える書を編むことが計画されていたのですが、種々の事情でのびのびになっていたのです。

 この「第2著作集」の編集作業は、昨年から私が担当することになりました。ただ、私がこの仕事を引き受ける際の必須の条件と考えたのは、まずは、古代学協会で永い間にわたって学術雑誌『古代文化』の編集にあたってこられた山崎千春さんに編集事務局をお願いすること。もうひとつは、私と一緒にこの仕事の責任編集にあたってくださる、全幅の信頼を寄せることができる研究者として、吉川真司さん(京都大学教授)にお願いしたいということ。しかし、忙しい吉川さんのこと、果たして引き受けてくれるかどうか不安だったのですが、恐る恐るお願いをしてみたところ、二つ返事で承諾していただくことができました。大変嬉しいことです。

 吉川さん、山崎さんといろいろ検討した結果、このシリーズは『角田文衞の古代学』と題し、2017年秋から2ヶ年計画で全4巻を刊行していく予定としました。今回の第四巻『角田文衞自叙伝』はその初回配本です。特に、晩年の角田先生が口述筆記によって執筆された「自叙伝」が残されていたのですが、これまで公表することができていませんでしたので、本巻にはそれを主体としました。また、生前の角田先生が克明に記録されていた自らの「年譜」もこれに加えました。ただ、「自叙伝」はもとが口述筆記であるという性格上、ところどころに先生自身の記憶違いや重複、文字起こし上のミスなどが散見しましたので、それの修正に思わぬ時間をとってしまいました。
 また、古代学協会、平安博物館、勧学院大学といった、先生が生涯にわたって追究してきた「理想の研究機関」の構想についての資料をも集成したことも特徴です。中でも注目されるのは「勧学院大学」です。ほとんど知られていないことなのですが、角田先生は昭和32年(1957)頃、歴史学の専門の大学を設立することを計画されていたのです。それは単に絵空事なのではなく、実現の一歩手前まで進んだというのですから驚きです。勧学院大学の予定地は、京都府乙訓郡長岡町(現・長岡京市)の長岡競馬場跡地の12万平方メートルで、そこには歴史学部と人文学部で専任教員139名(そのほかに副手66名)を擁するという一大大学が構想されていたというのですから、角田先生の思考の桁外れの大きさが伺い知れます。

 また「角田史学の構想」(原題は「私の歴史学」)というのも収録しました。これは、昭和58年に角田先生が自分の学問の全容を余すことなく語ったという貴重なものです。ただ、これはもともと口述筆記によって書かれたという由来から、文献註がなく、その点では使用に不便なところがありました。また、昭和58年以降の先生の業績が盛り込まれていないのは当然です。そこで、今回の収録にあたっては161項という多数の補註を加えることによって、そのあたりを補うことにしました。こうした作業を加えたことによって、角田先生の学問の全体像をより深く理解することが可能となったのではないかと思っています。さらに、本巻の「解題」は私が「角田文衞の軌跡」と題して執筆していますので、こちらもぜひご覧ください。

 本シリーズは公益財団法人古代学協会から刊行され、各地の図書館などに寄贈いたします。また、入手したいという方も多いことと思われますので、吉川弘文館に委託して一般への販売をお願いすることとしましたので、購入希望者は吉川弘文館にお問い合わせいただくか、書店を通じて同社に注文してください。この機会にぜひ本書を紐解いていただき、角田先生という稀代の歴史学者の歩みを追体験していただきたいと思います。

 第4巻が出たのですが、続いてあとの3冊の編集が控えております。しばらくはこの仕事で大車輪が続きそうです。

【書いたもの】
■『角田文衞の古代学 4「角田文衞自叙伝」』角田文衞(著)、古代学協会(編)、山田邦和・吉川真司(責任編集)
(京都、古代学協会、〈発売所:東京、吉川弘文館〉、2017年10月31日)、全406頁
~◇山田邦和(補註)「角田史学の構想~補註」283~297頁
~◇山田邦和(著)「[解題] 角田文衞の軌跡」389~405頁
■『同志社女子大学史料センター第22回企画展示「同志社女子大学のキリスト教主義教育 愛以貫之」展示目録』同志社女子大学史料センター(編)
山田邦和〈史料センター長・運営委員長〉、飯田毅・川田隆雄・北村博子・神田知子・松野浩之・三橋美和・仲万美子・中山まき子・大島中正・斎藤朱美・玉田佳子〈2017年度史料センター運営委員〉、小崎眞〈専門委員〉、塘利枝子〈学術情報部長〉(京都、同志社女子大学史料センター、2017年11月17日)、全26頁(山田執筆:「はじめに」〈1頁〉。その他、執筆分担明記なしだが、2~8頁「Ⅰ キリスト教の伝来と同志社」が山田執筆分)

【しゃべったこと】
◯「世界遺産と天皇陵古墳」山田邦和(講演)
(京都高等学校社会科研究会〈主催〉「秋季研究会~シリーズ・関西フィールドワーク『埴輪・古墳・天皇陵―北摂を歩く―』、高槻、高槻現代劇場(市民文化会館)、2017年11月25日)
◯「【室町幕府】考古学者とめぐる義満の王都、巨大権力の中枢・花の御所と相国寺へ―史上最高・幻の七重塔はどこにあった!?“日本国王”義満の最強首都構想―」山田邦和(ガイド)
(まいまい京都実行委員会〈主催〉「まいまい京都」、京都地下鉄今出川駅集合〈相国寺山門、塔の段町(相国寺大塔跡)、相国寺境内、相国寺慈照院前、同志社大学寒梅館、持明院御所跡(光照院)、細川邸跡、小川通、畠山図子、花の御所跡を見学〉、2017年11月25日)

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