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2020.01.02

学ぶとは、精神を耕すことなり、の巻

太宰治の『正義と微笑』。太宰の弟子の堤重久(後、京都産業大学名誉教授)の弟の堤康久(後、前進座俳優)の少年時代の日記をリライトした作品だそうです。
 その中で印象的なのは、生徒から慕われ尊敬されていた英語の「黒田先生」が「馬鹿野郎」な教員ばかりの学校に絶望して辞職する際、生徒たちに言い残した言葉。「勉強」の真実を突いていて余すところがない。

「お互いに、これから、うんと勉強しよう。勉強というものは、いいものだ。代数や幾何の勉強が、学校を卒業してしまえば、もう何の役にも立たないものだと思っている人もあるようだが、大間違いだ。植物でも、動物でも、物理でも化学でも、時間のゆるす限り勉強して置かなければならん。日常の生活に直接役に立たないような勉強こそ、将来、君たちの人格を完成させるのだ。何も自分の知識を誇る必要はない。勉強して、それから、けろりと忘れてもいいんだ。覚えるということが大事なのではなくて、大事なのは、カルチベートされるということなんだ。カルチュアというのは、公式や単語をたくさん暗記していることでなくて、心を広く持つという事なんだ。つまり、愛するという事を知る事だ。学生時代に不勉強だった人は、社会に出てからも、必ずむごいエゴイストだ。学問なんて、覚えると同時に忘れてしまってもいいものなんだ。けれども、全部忘れてしまっても、その勉強の訓練の底に一つかみの砂金が残っているものだ。これだ。これが貴いのだ。勉強しなければいかん。そうして、その学問を、生活に無理に直接に役立てようとあせってはいかん。ゆったりと、真にカルチベートされた人間になれ! これだけだ、俺の言いたいのは」。

カルチュア(culture):「文化」「教養」
カルチベート(cultivate):「耕す」「〈才能などを〉磨く、高める」

https://www.aozora.gr.jp/cards/000035/files/1577_8581.html

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